常に新しい行動を起こし続け、メディアから注目浴びるブドウ農家
NHK、日本テレビ、TBS、テレビ東京、日経新聞、TBSラジオなどなど、主要なメディアから取材が殺到する農家がある。
長野県須坂市で大正からつづくぶどう専業農家、岡木農園だ。この一年間で全国メディアに取り上げられた回数は優に10回を超え、「次はなにをやるつもりなのか?」とメディアから質問が入るほどの注目度である。
仕掛け人であり岡木農園の岡木宏之さんにインタビューをさせていただいた。ぶどう業界の風雲児はいま何を思い、仕掛けようとしているのか。その内側に迫ります。(2021年9月、インタビュアー:クダモノガリプラス事務局 石原)
岡木農園について
石原:この一年間のメディアでの取り上げられ方はすさまじいものがありますね。もともと高品質で知られ、長野オリンピックの際には各国の要人がぶどう狩りをしたことでも知られる名門農家でいらっしゃいますが、最近は特に目立っていらっしゃると思います。何かきっかけがあったのでしょうか?
岡木:いろいろな偶然が重なって今のありがたい状態が生み出されているのが事実です。ただ、新しい取り組みを地道にやり続けてきたことが新しいつながりや仲間を呼び込んでくれたのは間違いないですね。
石原:なるほど。岡木さんは大学卒業後には別の業界にいらしたんですよね?そういったご経験も新風を吹き込んでいる要素かもしれません。どういったきっかけで家業に入られたんですか?
岡木:はい、大学を出た後には信用金庫で融資の仕事をしていました。資金繰りは当然ですが、いかに売上を上げるのか、組織を作るのか、ということも多くの経営者と関わる中で学ばせていただいたことが今の自分の基礎になっていると思います。子供の頃から我が家のぶどうは日本一だと思っていて、こんなにも手間ひまかけてぶどうを誰がどんな想いで作っているのかを多くの人に知ってもらいたい、知ってもらうべきだ、という使命感から家業に専念することを決めました。
石原:当然、三代目のお父様はぶどう作りの達人として知られており、そういった中で岡木さんはぶどう作りは素人なわけですよね?どういったところからご自身の役割を見出していったのでしょうか?
岡木:主に販売促進面です。直売ですね。自分たちの顔を出して、自分たちのブランドで農業をやることはリスクがあります。勇気もいります。ただ、父のつくるぶどうが間違いがないものであることはよくわかっていました。それであれば、岡木の名前を出してぶどうを食べてもらおう、その反応を直接教えていただいて、さらに美味しいぶどうを届ける循環を生み出そうと考えました。
石原:岡木農園さんのHPは本当にキレイでこだわりを感じます。ドローンも使って空撮もしていますよね?あれも岡木さんの仕事ですか?
岡木:はい。当然ですが、自分たちのブランドで勝負するわけですから、名刺代わりになるHPにはこだわりました。ブランディングのプロにも入ってもらい、HPづくりだけではなくロゴや配送の化粧箱も含めてトータルでブランディングを考えました。ここに関しては本当に三代目の父の判断力はスゴイと思いましたね。決して安くない予算がかかることを伝えた時、「やってみろ」と背中を押してくれたことには感謝しています。本人はきっとHPとかそういうことわからなかったと思いますから。
石原:私もかなりの数の農家さんのHPをみるのですが、正直予算をかけてプロの手を借りてHPを作っている農家さんはほとんど見たことがありません。そういう意味では業界的にはデジタル化が遅れているし、大きな差別化には繋がっていると感じます。
新たな販促施策の数々
石原:岡木さんが手掛けてきた販促施策について教えていただけますか?
岡木:しっかりとしたHPを作って、オンライン通販をスタートさせたことに加えて、銀座の無印良品さんで、粒売りのシャインマスカットを販売させていただいたり、お菓子屋さんと組んで岡木農園ブランドでスイーツを販売したり色々やってきています。父の発案で、銀座の長野県のアンテナショップにぶどう畑を再現してぶどう狩りイベントを開催したこともあります。なので岡木農園のFacebookは割と華やかな感じになってますね。実際は田舎のぶどう農家なんですが(笑)。
石原:特にこの一年はメディアに取り上げられることが多かったと思います。きっかけを教えていただけますか?
岡木:全国区のメディアで取り上げられるようになったのは、2020年の9月に実施したオンラインシャインマスカット狩りがきっかけだと思います。感染症の影響で外出規制がかかり半年近く経ち、日本全体が息苦しさやリフレッシュを求めていたタイミングだと思います。そのタイミングでZOOMを使って自宅からぶどう狩りをし、翌日にフレッシュなシャインマスカットが食べられる、という企画を実施しました。キャパ的に多くは開催できなかったのですが、参加枠は即日完売状態で、プレスリリースを出したところメディアからも多くの反響をいただきました。
石原:まさに時流にのった企画だったわけですね。そういったメディアの反響なども考えて企画されたのですか?
岡木:いえ、結果的にそうなりましたが、私としては遠くに住んでいる高齢の義祖母にシャインマスカットがたわわになっている農園を見せてあげたい、自分で選んだぶどうをすぐに食べてもらいたい、という気持ちからスタートしたんです。これほどの反響がいただくことになるとは驚きました。そのタイミングでキュータスジャパン(*クダモノガリプラスの運営法人)の皆さんと知り合うことが出来て、企画段階からご一緒できたのも大きかったですね。一人だったらあそこまでスピーディに満足度の高いイベントを実施することは出来なかったと思います。
石原:私もメンバーの一人なんですが、何より岡木さんの「最高に美味しいぶどうを、大切な人に食べてもらいたい」という純粋な動機に賛同して、すごく頑張れた記憶があります(笑)
岡木:たしかに、儲けようとか有名になろうとか競合農家を出し抜いてやろうとか、そういうことはあまり考えてないですね。おっしゃるとおり、ただ「美味しいぶどうを食べてもらいたい」んです。
社会課題の解決にもチャレンジ
石原:今年大きな話題になった取り組みがありましたね。テレビ東京のワールドビジネスサテライトでも特集されていました。
岡木:農ケーションですね。農家の人手不足の解消、地域活性化、リモートワーカーの生活環境の改善を目的として、実証実験を行いました。コロナで人の移動がなくなってしまったので、地元外から農作業を手伝ってくれる方を集めるのが難しくなっています。当然温泉旅館など観光も大きなダメージを受けています。一方で、都会には多くのリモートワーカーがおり、ずっと家にこもっているのでリフレッシュを求めていると。だったら温泉旅館で滞在しながらリモートワークをしながら、朝と週末だけカンタンな農作業を手伝ってリフレッシュしてみたらどうかと企画したものです。ご参加いただいた方にはとても満足いただけて、ここからどうやって本格化するか官民連携して検討に入るところです。
今後の展開について
石原:今後検討している施策はありますか?
岡木:当然、美味しいぶどうを作り続けることが第一です。むしろそれ以外のことは”おまけ”だとも思っています。また、たくさんの施策をやらせていただいていますので、お客様・それぞれの関係者に喜んでいただくことが優先事項です。
その上で今後チャレンジしたいのが海外です。岡木農園に限らず、日本の農家が丹精込めてつくったぶどうは間違いなく美味しいです。地球上のすべての人に人生で一度は口にしてもらいたい。きっと感動してもらえるはずなんです。どうしたらそのビジョンに到達できるか、小さなことからでもまずは一歩動き出してみようと思っています。大きなビジョンをもって不器用でも小さくても一歩踏み出すと、仲間がふえて大きな活動に繋がっていくというのは、この数年で学んだ一番大きなことです。
石原:極めて私的ですが、私はいまカンボジアに住んでいますので、カンボジアで岡木農園のぶどうが食べられることを楽しみにしています!
岡木:現地で石原さんが栽培してくれてもいいんですよ!あ、その方向性もありですね・・・。まず一歩動いてみます!
※このあとすぐに海外向けの情報発信としてYou Tubeチャンネルがスタートしました。要チェックです!
2021年 岡木農園のニュース一覧
- Google Arts & Culture に掲載
- 農業×ワーケーション 農ケーション実証実験
- 赤いシャインマスカット、最新品種クイーンルージュ®︎の出荷開始
- 東京駅一番街にポップアップショップを出店
- 名古屋高島屋いいもの探訪フェア2021に出店
- GINZA SIX「のもの POP‐UP STORE」に出品
- オンラインシャインマスカット狩りイベントを開催
- 海外向けYou Tubeチャンネル「OKAKI Grape Farm」をスタート